大阪府大阪狭山市の男性（３１）が、府警天満署で器物損壊容疑で任意の取り調べを受けた際、「アホ」「お前なめてんのか」などと暴言を浴びせられたとして、近く特別公務員暴行陵虐と職権乱用の両容疑で署員を刑事告訴する。府警は「不適当な発言があったことは把握しているが、調査中でコメントできない」としている。

　男性や代理人の弁護士によると、男性は昨年１０月１８日午後１１時半ごろ、大阪市北区の当時の自宅マンション前の路上に駐車中の乗用車にブロック片を投げ、運転席の窓を傷つけた器物損壊容疑で任意の聴取を受けた。同じマンションに住む車の所有者が「衝撃音を聞いて外に出たら男性が現場にいた」と、駆けつけた天満署員に話したという。

　捜査関係者や男性側の弁護士らによると、男性は署の取調室で翌１９日未明、取り調べを受けた。男性は否認したが、「お前しかおらん」「早く認めろや」と署員が述べ、「現場で女性と電話中に腹を立てて、落ちていたブロックを車に投げた」という内容の供述調書に署名したという。男性側によると、取り調べは同日午前０時から約５時間に及んだ。

　男性は１１月２７日、再び署の任意の聴取に呼ばれた。容疑について「やっぱり身に覚えがない」と訴えると、取り調べを担当した署員２人から「逮捕されんぞ、お前」「眠たい話は聞かれへん」「なんで反省できへんのじゃ、アホ」と言われたという。男性はこのときの様子をＩＣレコーダーで録音していた。

　男性は１２月１０日に書類送検され、大阪地検は１２月１４日に不起訴処分（起訴猶予）にした。男性によると、男性の父親が車の所有者に示談金を支払っていたという。

　男性側は、現場近くにある防犯カメラ映像を署が確認していない▽現場に落ちていたブロック片の指紋照合をしていない▽事件発生時、男性が携帯電話で話していた知人女性への聴取もしていない――として捜査が不十分だったと主張。取り調べ後に「不安抑うつ障害」と診断されたとして、近く府に２２０万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こす。

　容疑者の取り調べ適正化に関する国家公安委員会の規則では、不安を覚えさせたり、尊厳を著しく害したりするような言動を「監督対象行為」に当たるとして禁止している。

http://www.asahi.com/articles/ASJ3T3D9VJ3TPTIL010.html
2016年3月25日12時56分